ミヤマキリシマ

山を歩くと、それぞれの季節に、それぞれの山に、それぞれの花が咲いている。
当たり前ではないかと思われるだろうが、当たり前である。

山に登るというその行為自体が目的だったものが、いつのまにか、季節の花を愛でるために山に登ると、目的が変容しているのにはたと気づく。

普段地上では花なんぞとは全くもって無縁で無骨な野郎が、いきなり花を語り出すのである。
山とは確かに、リンドウやキンポウゲやタンポポでさえも、その可憐さに足を止めそっと近づきスマホをかざして、汚れきった心を洗った気になれる場所なのである。

「ミヤマキリシマ」。
言わばただのツツジである。
山一面とまではいかなかったり枯れてたり虫にやられていたりと、完全美ではないのだけれどそれが山で見ると、感動モノなのである。

和名に冠されたキリシマは、やはり霧島山のことで、深い山に咲くツツジと言うことで「ミヤマキリシマ(深山霧島)」。
かの坂本龍馬が新婚旅行で霧島を訪れた際、手紙に「きり島つゝじが一面にはへて〜きれいなり」と書いている。
龍馬も俺と同程度の感性の持ち主であったことは、この際認めてあげよう。
この時期、霧島山はもとより、えびの高原阿蘇山九重山雲仙岳鶴見岳などと、九州各地の高山で出会う事ができる。

4月は身内に不幸あり、5月は舐めきってたコロナにやられた。
今日から6月、水無月(みなづき)だ。