メンテ

とあるフレンチレストランの軒先、今年もミントがぎっしり繁茂していて、愛らしい白色の花を咲かせている。
お日さま大好きで爽やかでフレッシュな香り、一枝だけ見れば、可憐ながら命みなぎる少女のようだ。

ギリシャ神話に出てくるニンフのメンテは、その美しさで冥王ハーデスの心を奪い、そのことを知った妻ペルセポネがメンテを呪いで草に変えてしまった。
ミントがよい香りを放つのは、メンテが人々に自分の居所を知らせるためだとか。

農業をやってた時、一見優雅に見えるハーブの類も、趣味と実益をかねて栽培していた。
実際のミントは、ミントテロとも呼ばれていて、地植えをすればその旺盛な繁殖力で他の植物を駆逐する。
強烈な芳香は虫よけにもなると言うが、一歩間違えば害虫の天国にもなった。
おまけに、収穫を繰り返していくと本来の香りは次第に消えて、成長と共に雑味成分が増えていく。
根や茎の旺盛な生命力に加えて、とどめはこの可憐な花が作る種だ。

香りに魅せられ翻弄され、やがてその雑草のような生命力にひれ伏す…。
まるで現世の男女世界の写し絵のようだと思い嘆くのは、私だけだろうか。

今日から9月、「長月」(ながつき)だ。