ピラカンサ

路傍の実シリーズ「ピラカンサ」。

筑後川河川敷をクロスバイクで疾走したり、よそんちの季節の花を求めてのんびり徘徊していた頃が懐かしい。
今は暇なようでそんな暇は無い。

急な買物を済ませて家路を急いでいた。

聖マリア病院の正面の一角はちょっとした木立になっていて、そこから鋪道に向かって真っ赤な鮮やか過ぎる実が、これでもかというほどたわわに実って舗道側に迫り出していた。

短いその木のトンネルを抜けかかったのだけど、後髪を引かれてちょっとだけ後戻りした。
風に揺られそよぐのを一瞬だけ待って、たったの一枚だけスマホに切り取った。

そそくさと立ち去ろうとして、背後に何か確かな気配を感じて振り返ると、一人の女性が同じようにスマホをかざしていて、眼が合った。

「綺麗ですよね。」
彼女はちょっとはにかんで、そう言った。
「凄いですよね。」
僕はほんの少しだけ微笑み返して、そう答えた。

憂いを帯びた綺麗な女性(ひと)だった。

ピラカンサの実は、その鮮やかさとは裏腹に、完熟するまではかなり渋くとても不味いという。
おまけにピラカンサの種には、アミグダリンという青酸系の毒が含まれているという。